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滋賀はシリコンバレーになれるのか?!

新たな産業が起こり、GoogleやAppleに代表されるようなグローバル起業へと成長を遂げたベンチャーが数多く誕生し、イノベーションの聖地とまで呼ばれるシリコンバレー。滋賀県にも琵琶湖があり、適度に交通の便がよく、研究に力を入れる大学や、グローバル企業の拠点も集積しているなど、気候以外はシリコンバレーと比較しても遜色ない条件がそろっているはずだ。これまでにも、日本版シリコンバレーの必要性は叫ばれており、産業クラスターや知的クラスターの形成が行われてきたが、それに対する1つの解として、滋賀県では、平成28年度滋賀発成長産業発掘・育成事業を整備、株式会社リバネスとともに滋賀テックプランターを開始した。率先してイノベーション創出に挑む三日月知事ほか、キーパーソンたちのの取材から見えてきたのは、単なる連携に終わらない「滋賀県ならではのエコシステム(生態系)」の必要性だった。

日本を代表する企業の工場・研究所や、大学が集積する滋賀県。2015年3月に「滋賀県産業振興ビジョン」を策定し、①水・エネルギー・環境、②医療・健康・福祉、③高度モノづくり、④ふるさと魅力向上、⑤商い・おもてなしの5分野を重点領域と定め、イノベーション創出に向けて走りだしている。今年度、さらに「滋賀テックプランター※」という新事業創出に向けたエコシステム(生態系)の形成に動き始めた。これらの取り組みは滋賀県をどのように変えていくのだろうか。

対談:「世界から滋賀へ、滋賀から世界へ」
メガベンチャー創出に向けた新たな取り組み

集積するグローバル企業とアカデミア

高橋 この20年間、日本経済は停滞していると言われ続けてきました。でも私たちは、まるでバネが縮んでいるように、力を溜め込んでいる時期だったと考えています。各地域でテクノロジーが生まれ、イノベーションのタネが育ち続けています。 これが弾けるとき、世界は一気に変わるはず。その可能性を秘めた地域の1つが滋賀県だと考えています。

三日月 琵琶湖のまわりには、いわゆるグローバル企業の工場や研究所がたくさんあります。そして、その大企業を支えるため技術力を高め、ノウハウを蓄積してきた中小企業も充実している。そこで働いている人、関わっている人が本当にたくさんいる。テクノロジーベンチャーを生み出し、支援する素地は十分にあると思っています。

高橋 もう1つの重要な視点が、大学との連携です。研究者は普段から自身の研究を通してグローバルに戦っている。彼らを巻き込むことで、挑んでいる課題やテーマが一気にグローバルに戦えるものになります。

三日月 滋賀県には13の大学があり、3万人を超える学生、そして彼らを指導する研究者もいます。新たな動きとしては、2015年度に龍谷大学の農学部が設置されたのをはじめ、2017年度には滋賀大学に日本初のデータサイエンス学部の設置、さらに2018年度には立命館大学に食科学部の設置が計画されています。研究力の高い大学、デザインや経営など事業化にむけて連携できる強みを持った大学が揃っており、世界の動向に応じて柔軟に対応できるのではないかと考えております。

高橋 研究者との距離が近いことは大きなメリットです。地域の中だけでは課題解決に結びつかないテクノロジーも、研究者をチームに引き込み、彼らの経験や専門性を組み合わせることで、グローバルな視点から解決できる課題と繋がることができるようになります。

連携だけで終わらない、 エコシステム(生態系)を作る

三日月 これまでにも、産学官連携での事業創出支援には挑戦してきました。そこには、世界とつながったプラットフォームと、寄り添い型の支援が不足していたのかもしれませんね。

高橋 リバネスでは、2014年から研究開発型ベンチャーの立ち上げと事業化支援を行うテックプランターというエコシステムを運営しています。2014年度に東証一部上場を果たした株式会社ユーグレナを支援する中で見えてきたポイントや必要な支援内容を盛り込み、第2・第3のユーグレナを生み出すことが目標です。

三日月 今回の滋賀テックプランターのベースになっている取り組みですね。

高橋 目指すのは、ただ連携をすることではなく、本当に世界を変えること。ベンチャーを立ち上げることはチームビルディングの1つの手法だと考えています。会社にしようとするパッションとモチベーションがチームを進めていきます。すべてのベンチャーがうまくいくわけではなく、一部は潰れていく前提でもよいとすら思います。

三日月 今の企業にも必要な発想ですね。既存の事業をくっつけたり、潰したり、立ち行かなくなっているものがあれば変化させていく。そういう発想に触れられること、そして、それを志高く推し進めているベンチャーと協業できる可能性があるのは、既存の企業にとっても参加のメリットになりえますね。

高橋 例えば森の生態系をみると、そこには大木もあれば小さな草木もある。大きな動物もいれば、アリや微生物もいます。誰が偉いわけでもなく、それぞれが役割を持って関わりあっている。そして、たとえ枯れてしまっても次の芽が育つための養分になる。大企業だけでなく、地場産業に関わる町工場、大学、そして自治体にも参加してもらうことで、もしうまくいかなかったとしても、それを吸収して、次のエネルギーに変えられるのがエコシステムの役割なんです。

世界から滋賀へ、滋賀から世界へ

三日月 滋賀県には、立命館大学発ベンチャーである株式会社三次元メディアや株式会社人機一体、IBMの技術者たちが立ち上げた株式会社日本ジー・アイ・ティーなど、世界と戦えるベンチャーが生まれ始めています。その、さらなる成長を支援するとともに、あとに続くようなベンチャーが次々と生み出される環境を実現していきたいです。

高橋 リバネスは、現場に飛び込んで地域活性化を研究する研究者です。そして、研究成果の事業化を支援する専門家です。私たちは、一緒に議論するし、一緒に開発するし、一緒に営業だってします。そういう意味で、委託事業というチャンスに恵まれ、滋賀県の皆さんとタッグを組むことができたのには大きな意義がある。

三日月 滋賀県の特徴は、なんといっても水環境ビジネスです。日本最大の琵琶湖は275億トンの水を蓄え、日本全国の人口の11%、約1450万人の水源となっている。世界に誇る水環境関連の技術、製品、情報が集積し、メガベンチャーが育つ場にしていきたいですね。

高橋 本気で10年間取り組み続ければ、ユーグレナにも匹敵するメガベンチャーが必ず生まれます。アジアをはじめとして、世界的にも人口増加や工業化による水質汚染が深刻化していく中で、水環境ビジネスは世界と滋賀が直接つながることが期待できますね。

三日月 新たなものづくりビジネスの可能性は、広く世界に広がっています。滋賀から生まれた技術でグローバルに戦うベンチャーの誕生と成長を促すエコシステムが必要ですね。県としても長期的な視点でその実現に本気で取り組んでいきます。

 

※滋賀テックプランターは、滋賀県から委託を受けた株式会社リバネスが「平成28年度滋賀発成長産業発掘・育成事業」の一環として実施いたします。

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